椎名林檎

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東京事変

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Review

■すべりだい
1998:作詞/作曲 椎名林檎

あなたが八度七分の声を使う時は
必ず私に後ろめたい事がある時

汗ばんだって恥じらったって 理由もなく触れたがったりした
凍えたって甘えたってただの刹那に変わった二人

その時全て流れ落ちた 冷たい秋はたった二度目でも
砂場の砂も気持ちも全部
二人の手で滑り落とした


あなたが脈絡もなくキスをくれる時は
必ず私の機嫌を損ねたような時

汗ばんだって恥じらったって 理由もなく触れたがったりした
凍えたって甘えたってただの刹那に変わった二人

その時全て流れ落ちた 激しい雨には慣れていたけど
お得意の嘘や詮索ごっこが最後の遊びへ導いていた

このごろ悔やんでばかりいる 口には決して出せないけど
今の私だったらあなたと すべらずに済むような気がする

許されるならほんとはせめて すぐにでも泣き喚きたいけど
こだわってると思われないように
右目で滑り台を見送って
記憶が薄れるのを待ってる

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デビュー曲「幸福論」のc/wとして知られる曲。スペースシャワーで椎名林檎本人が、「幸福論ではなくこの曲をデビュー曲にしたかった」と言った事でも有名だ。世間的に認識されている「椎名林檎」というアーティストを考えると、幾分か普通な、意外な印象を受ける詩なのかもしれない。でも自分にとっては結構どストライクな、まさに「椎名林檎」って印象を受ける詩な気がする。ベースから始まる、この曲のメロディも、何か郷愁が感じられる。「本能」とかでエロティシズムに乗せて見せる執着と違って、誰もが持ちえるような後悔、想い、意地。そんなものが、なんだか自分自身探していたような決定的な表現がこめられている。過程はいくつも積み重なっていくけど、その瞬間はまさに刹那で、その刹那が無ければどうとか、そうゆうことでは全く無い。結局は全ては一つで、何を言ってもそれでしかない。忘れるはずがなく、忘れたくもなく、忘れたくもある。そんな心境に、「記憶が薄れるのを待っている」は、まさにその通りな気がするのだ。流れていく砂はもう、直視しちゃいけない。卑怯な気もする。しかし、きっと、イヤ間違いなく、心の奥底で、「記憶が薄れ」ていってしまうことを、願っている。雙六エクスタシー初日、渋谷公会堂で、この「すべりだい」が流れた瞬間。観客はどよめいた。正直、まさかこの曲を今演とは思わなかった。原点の一つであっても椎名林檎が進む方向にある曲とは思えなかったし。驚いた。きっと、過去現在未来ひっくるめ、全部が自分であると。何もかも、受け入れると。そうゆうこと、なのかと思わせられた。